ブックレビュー【風の中のマリア】 [読書の時間]

本屋大賞ノミネート作「Box!!」の作者の最新作。


「Box!!」は未読なんですが、この小説の基本コンセプトに今まで無かったものを感じました。


 


 


 


 


女王アストリッドを頂点とする女だけの帝国の戦士マリア


彼女の使命は、生まれてくる妹達の為に食料を調達する事


恋をする事も子供を生む事も許されない彼女は、ハンターである事に誇りを持っていた


 


今日も愛する妹達の為に狩に出かけるハンター、マリア


その脅威のスピード故に「疾風のマリア」の異名を持つ彼女にかなう敵はいない


 


しかし、ある日出会った初めて見る異性によって自分自身の存在意義を問い始めるのだった・・・


 


 


 


 


 


なんか在りがちなRPGっぽい話だと思いませんか?


 


 


でもこのマリア、オオスズメバチなんです。


オオスズメバチの世界を描いた異色小説なんです。


 


なんと言っても、他の虫を殺して必要な部分だけを噛み砕き、肉団子にする描写が生々しい。


マリアをはじめとするワーカーと呼ばれる蜂がどんな狩をしているかがリアルに描かれており、もう気分は昆虫大戦争。


自分達の種の存続を賭け、キイロスズメバチの巣に決死の攻撃を加えるクライマックスでは第1級の大作映画を見ているかのような感覚に陥ります。


 


ハンターであるマリアの心理的な描写はもちろんフィクションですが、本当にこんな事考えながら戦ってるんだろうな、と思わせる程のスズメバチ研究の取材に基づき紡ぎ出されるストーリーは、読んでいて蜂に感情移入してしまうに十分で、中盤からは一気読みでした。


 


人間にとっては(虫にとっても)非常に危険極まりない、オオスズメバチですが、彼女達、彼達も生きるか死ぬかの厳しい自然と闘っている生物だと再確認。


 


 


 


さて、冒頭に女だけの帝国と言いましたが、何故女だけなのでしょうか?


どうして女王はたくさんの卵を産む事ができるのでしょうか?


 


 


その辺りも含めて、読んだ後はきっとオオスズメバチに関する知識がグンと増えます。


正に一石二鳥な小説です。


 


 


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